27.3% ― この数字は85歳以上の高齢者の方の認知症発症率です。統計上は実に4人に1人を超える方々が、85歳を過ぎると認知症にかかってしまうことになります。
さらに、全世帯に占める1人暮らしの高齢者の割合も約1割となり、今後ますます増加することが予測されております。
配偶者に先立たれた、あるいは家族はいるが遠くに離れてしまってなかなか頼ることの出来ない高齢者の方にとって、「認知症」を発症してしまうということは大変重いテーマとなります。
ひとたび認知症等にかかってしまうと、ご自身で物事を判断することが難しくなり、相手の言いなりに何でも契約をしてしまったり、言葉巧みに騙され、せっかくご自身で築かれた財産を手放してしまうことにもなりかねません。
さらに症状が進むと、病院への入院や介護施設への入所が必要な場合でも、そのための契約行為自体が出来なくなってしまい、資産があっても必要なサービスを適切に利用することが出来なくなってしまうことも考えられます。
ご自身のまわりにサポートしてくれる方がいなければ、年齢を重ねることによって、いくらお金を持っていようとも、自分でそれを使うことが出来ない、処理をすることができないという事態が起きうるのです。
そのような事態を防ぐために有効なのが、「成年後見制度」です。成年後見制度には大きく分けて、「法定後見」と「任意後見」の二つに分かれてきます。
「法定後見」は、既に認知症等になってしまわれた方に対するサポートで、家庭裁判所に申し立てをして、判断能力の程度に応じて「後見人」「保佐人」「補助人」いずれかが本人のサポートを行います。ただしこれでは、ご自身で信頼のおける方を選任することが出来ませんし、何より認知症になった後、速やかに裁判所に申し立てが行われるとの保証が一切ありません。
認知症になる前から、きちんと備えるためには、もう一つの「任意後見」が有効です。「任意後見」とは、ご自身の判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ、ご自身にかわって、財産を管理したり、必要な契約を結んだりする方を決めておく契約です。
ご自身で信頼できる人を指定することが出来る上、後見人への報酬・代理権の範囲も思い通りに決めることが出来ます。
ただし、任意後見契約は、契約を結んだだけでは、法務局に登記がされるだけで、実際の契約はスタートしておりません。認知症等にかかって、家庭裁判所に申し立てることによって初めて効力が発生するので、せっかく任意後見契約を結んでも、認知症等にかかってしまったことがわからず、速やかに家庭裁判所に申し立てがなされない内に、詐欺等により、財産を失ってしまうことも考えられます。
そのようなご不安を取り除くためには、「見守り契約」がおすすめです。「見守り契約」は、任意後見契約を結んだ後、元気なうちから月1~2度ほど連絡を取り合い、場合によってはご自宅まで訪問して、本人の状態を逐一チェックしていく契約です。会話の中で、判断能力の低下がみられたときには、速やかに家庭裁判所への申し立てを行うので、認知症になってから家庭裁判所に申し立てをするまでの最も危険な期間を最小限に抑えることができます。
自分は認知症にならない!と考えていても、その時は突然やってきます。ご自身が人間らしく最後まできちんと生活することが出来るように、自己責任で、将来に備えておくことは、とても大切なことだといえます。
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